1号機メルトダウン公表2011-05-17

5月16日MBSラジオ小出裕章氏「1号機メルトダウン公表・東電の情報開示等について」
MC:リスナーの方々から沢山のメール・FAXを頂いておりますが、  ラジオネーム(省略)という方は、  今回の1号機のメルトダウンの報道についてなのですが、  「東電は、地震の直後からこの事を解っていたのではないでしょうか。  重要な事実を隠して来たようにしか思えないのですが」と  おっしゃっています。  小出先生の感想はいかがですか。
小出氏:私は、この事故の過程のデータの出し方について  2つの問題があると思います。  ひとつは、東京電力が知りながら隠していたという事、  ふたつめは、東京電力も事態があまりにも酷くて  事実がどうであるかを知り得ないまま、ここまで来ているという、  そちらです。
MC:それは、2つのうち、どちらかという意味ですか。
小出氏:ですから、今回また東京電力が、  1号機に関しては炉心が全く露出していてメルトダウンをしていた、  というふうに数日前に認めた訳ですが、  それが、東京電力が初めから解っていたのに隠していたのか、  あるいは事態を正確に把握するデータを持ち得なかったために  判断が間違えていたのか、どちらかだろうと思います。
MC:知りながら隠していたとしたら、それは許されない事だと思いますが、  では、知り得なかったとしたら・・・
小出氏:それが余計私は深刻だと思うのです。  要するに、東京電力すらが、事態がどうなっているかという事を解らないまま、  今日まで来てしまっているという事を示している訳ですので、  どちらの場合でも物凄い深刻な事だ、というふうに私は思います。
MC:知りながら隠していたのだったら、トップの体制が変われば  もしかしたら隠さない情報の在り方というのが変わるかもしれませんけれど、  知り得なかった、解っていなかったと言われると、  企業としてお手上げなのではないかと思ってしまいますが。
小出氏:もともと私はこの番組でも何回か聞いて頂いたと思いますが、  私のような人間にとっては、信頼性のおけるデータというものが全てなのです。  それが命なのです。
  でも、ついこの間までは、1号機の原子炉内の水位というのは、  燃料棒の上端からマイナス1700mmだというふうに東京電力はずっと言ってきました。  私はそれが真実なのだと信じて、そのデータに基づいて、  私の推測を様々に皆さんに聞いてきて頂きました。  原子炉(炉心)の上端は露出しているから壊れている、  でも下の方はまだ水があるから、たぶん健全なのだ、という事を聞いて頂いて、  上部の壊れたものは、下の方は健全だから、  まだそれより下に落ちられないで、その場所に残っているはずだ  というふうに聞いて頂きましたし、  その真ん中辺りで水位が維持されている事は、  壊れている場所が再循環系の配管だからだ、  というふうに私は推測している、と皆さんに聞いて頂いたと思います。
  しかし今回いきなりもう全部が露出しているというふうに言われた訳です。  そうなると、もう炉心全体はもちろん溶けてしまっていますし、  圧力容器の底に崩れ落ちてしまっていると思います。  そして、いくら水を入れても、炉心に水がないという事は、  圧力容器の胴体部分ではなくて、底に穴が開いているという事を示しています。  そうなれば、崩れ落ちた燃料の溶けた部分はその穴を通して、  下に溶け落ちていると思います。
MC:これが格納容器、外側の容器に落ちているのではないかという話、  これは、細野首相補佐官も認める格好となったようなのですが。
小出氏:でも、私自身は、今東京電力が言っている原子炉の炉心の水位が、  物凄く低くて、炉心全てが露出してしまっている、というその説明も、  本当なのだろうか、本当にそれが信頼出来るデータなのだろうか、  という事に、今は眉に唾を付けながら聞いています。  ですから、それ程その事故の実態が解らないまま、  皆でああでもないこうでもないと議論をしているのではないかな、  と恐れています。
MC:細野さんは、先ほどのニュースによりますと、  2号機3号機もメルトダウンしていうという恐れを含めて、  工程表を考え直す、とおっしゃっております。  それは当然な事なのですね。
小出氏:1号機は、水位計を調整するまでは、  燃料棒の先端からマイナス1700mmまでは水があると言っていたものが、  水位計を調整した結果一気に炉心が丸裸だったと言った訳ですよね。  2号炉も3号炉ももちろんもうその可能性が強い訳ですから、  そちらももう既に溶け落ちているという可能性はあるだとうと思います。
MC:しかし、ラジオネーム(省略)さんが言ってらっしゃるのですけれども、  「菅総理は、工程表に日程には大きな影響は与えないて行けるのではないか、  と答弁しています。その信憑性はあるのですか」と質問してらっしゃるのですが。  どうでしょう。
小出氏:それは、先ほど水野さんが素人でも解らないとおっしゃった通り  私は少なくとも専門家のはしくれだと思いますが、  私にも全く解りません。  どういう論理でそんな発言が出て来るのですか。
平野氏:そもそも水棺が出来なかったという事自体も、  もうそれは今後の作業が上手く行かないというのを承知をしているような  気がしているのですけれども、  水素爆発も考えられなかったみたいな事を、東電の人達が、  今になって言っているのですけれども、  今になって解るデータが、3月11日の午後11時に、  放射線量が原子炉建屋とタービン建屋の間の扉で、  毎時1.2~0.5mSv観測されていた、というようなニュースが  今日流れているのですが、これを見て一科学者として、  爆発の可能性というのは判断できなかったのですか。
小出氏:確かその時には、同時に1時間当たり300mSvというような測定値も  あったというふうに私は聞いたように思うのですが、  そのような高い線量があるとすると、もう燃料が損傷を始めているという事ですから、  水素爆発は十分に起こり得るとその時思ったはずだ、と私は思います。
MC:では、水素爆発の予測が出来たら、  本当だったら近隣の方達に少しでも逃げてくれ、という事は言えないのですか。
小出氏:もちろん言わなければいけなかったのですね。  でも私もそういうデータを全く知らないまま、  12日に1号炉の原子炉建屋がいきなり鉄骨だけになってしまった、  という映像を見て、驚愕した訳です。  たぶん原子力を推進して来た人達も、ビックリしただろうと思いますし、  本当であれば、もっと正確なデータを時々刻々提供すべきだったと思います。  その辺はさっき聞いて頂いたうちの、東京電力が知り得た情報を隠した、  という方に当たります。
MC:ここの所を隠さず、時々刻々出していたらば、  いろいろな方達がすぐに逃げてくれ、というメッセージを出せたかもしれないし、  少なくともあの時、小出先生は1mでも遠くへ逃げて頂きたいと思っている、  と発言なさったのを、私は覚えているのですよね。
小出氏:そうです。
MC:ここの所が、国家的に機能しなかった。  というのは、やはり情報の出し方に大きな原因があった、という事なのですかね。
小出氏:はい。  全く情報に関して、先ほどの申したけれども、隠すという方の典型ですね。
近藤氏:先生、3号機の方、細野補佐官が今最も気掛かりだ、  というような事を言っているのですけれども、  ホウ酸というのを注入しようと。  これは前も話があったようなのですけれども、  これが今何か上手く行っていないのですかね。
小出氏:ホウ酸を注入する事自身は簡単だと私は思います。
近藤氏:これは再臨界を防ぐための・・・
小出氏:そうです。
近藤氏:かなり効果はあるのですか。
小出氏:再臨界を防ぐという意味では、ホウ酸は圧倒的な効果があります。  ですから、入れるのはもちろん良い事だと思います。
近藤氏:逆に、再臨界の可能性があるというように見た方がまだ良い訳ですか。
小出氏:東京電力が、そう考えた訳ですね。
近藤氏:念のために、と言っていますけどね。
小出氏:私は、もともと福島の原発で再臨界が起きるという事は、  可能性は物凄い少ないと思って来た人間なのです。  それで、一時期クロルの38が検出されたと東京電力が言った時には、  それならば再臨界を疑う以外にない、と私は発言をしましたけれども、  まさかそんな事はないだろうな、と思いながらもそれを言いました。  しかし、その後クロル38の検出は無かった、と東京電力は訂正した訳で、  まあ当然そうだろうと思いましたし、  再臨界はたぶんこれからも起こらないだろうと思います。  でも、念のためにホウ素を入れるという事は良い事だと思います。
MC:毎日新聞の昨日の朝刊に出た話で、  津波でこのような事態になったというのは想定外だった、というふうに、  いろいろ今まで聞いていたのですが、いやそうではなくて、  経済産業省の原子力安全基盤機構という所が、  もう2007年度から警告をしていた、と。  津波で炉心の損傷が起こりますよ、と警告をしていたという話があるのです。  実際に想定外という言葉では、逃げられない事なのですか、これは。
小出氏:本当の事を言えば、そうだろうと思います。  でもそれは、基盤機構が指摘をしたかどうかという事ではなくて、  原子力施設というのは何が起きても不思議ではない訳ですから、  ちょっと小さなトラブルでもそれが拡大して行くという事があって、  もともと「想定外」というような言葉を使ってはいけないような  機械だと、私は思って来た訳です。  ただ、そういう事を言ってしまうと、原子力発電所だけは、  やはり建設出来なくなってしまうのですね。  ですから、国としては、どんな事があっても「想定外」という言葉を  使い続けるしかなくて、ここまで来てしまったという事な訳です。
MC:それから、作業員の方が、死因は心不全と伝えられておりますけれども、  おひとり亡くなられたようです。  60歳代の男性作業員の方が体調不良を訴えて  病院に搬送されましたけれども、亡くなられました。  死因は、心不全というより他は情報がございませんが、  被曝線量は低い、そしてまた放射性物質の体への付着は無かった、  そして外傷も無かった、というふうに伝えられています。
  まあ、これとは別件ですけれども、作業員の方が毎日新聞の取材に答えて  証言なさっていて、この所作業のルールや手順が大分緩くなっていて、  これまでだったら、体を汚染した場合はしっかり洗って  完全に落とさなければならなかったのに、  今は完全は除染が出来なくても作業に戻っているというケースがあるのですね。  れについて、どのようなご意見でしょう。
小出氏:あり得る事だと思います。  物凄く長く被曝作業が続いている訳ですし、  現場は本当に混乱を極めていると思いますので、  どんどん被曝の管理が緩くなるという事は、私から見ても想像に難くありません。  何とか気を引き締めて、やって頂きたいと思います。
  もう一言付け加えたいのですが、今回の亡くなった方が、  仮に被曝で亡くなったのでないとしても、  この物凄い困難な原子炉事故を収束させるために  過酷な被曝環境の中で作業をしてきた、  夜寝るのも床に敷いた寝袋の中で寝なければいけない、  そんなような環境の中で働いて来た方が亡くなったいう、  その事だけは忘れて欲しくないと思います。
MC:そうした過酷な環境の中で、本当に命がけで頑張って下さっている方がいて、  今何とか今日この時を迎えているというのを感じます。  京都大学原子炉実験所助教小出裕章先生、どうもありがとうございました。
近藤氏:ありがとうございました。
小出氏:ありがとうございました。
ーーーー1号機、津波前に重要設備損傷か 原子炉建屋で高線量蒸気
 東京電力福島第1原発1号機の原子炉建屋内で東日本大震災発生当日の3月11日夜、毎時300ミリシーベルト相当の高い放射線量が検出されていたことが14日、東電関係者への取材で分かった。高い線量は原子炉の燃料の放射性物質が大量に漏れていたためとみられる。
 1号機では、津波による電源喪失によって冷却ができなくなり、原子炉圧力容器から高濃度の放射性物質を含む蒸気が漏れたとされていたが、原子炉内の圧力が高まって配管などが破損したと仮定するには、あまりに短時間で建屋内に充満したことになる。東電関係者は「地震の揺れで圧力容器や配管に損傷があったかもしれない」と、津波より前に重要設備が被害を受けていた可能性を認めた。
 第1原発の事故で東電と経済産業省原子力安全・保安院はこれまで、原子炉は揺れに耐えたが、想定外の大きさの津波に襲われたことで電源が失われ、爆発事故に至ったとの見方を示していた。
 地震による重要設備への被害がなかったことを前提に、第1原発の事故後、各地の原発では予備電源確保や防波堤設置など津波対策を強化する動きが広がっているが、原発の耐震指針についても再検討を迫られそうだ。
 関係者によると、3月11日夜、1号機の状態を確認するため作業員が原子炉建屋に入ったところ、線量計のアラームが数秒で鳴った。建屋内には高線量の蒸気が充満していたとみられ、作業員は退避。線量計の数値から放射線量は毎時300ミリシーベルト程度だったと推定される。
 この時点ではまだ、格納容器の弁を開けて内部圧力を下げる「ベント」措置は取られていなかった。1号機の炉内では11日夜から水位が低下、東電は大量注水を続けたが水位は回復せず、燃料が露出してメルトダウン(全炉心溶融)につながったとみられる。
 さらに炉心溶融により、燃料を覆う被覆管のジルコニウムという金属が水蒸気と化学反応して水素が発生、3月12日午後3時36分の原子炉建屋爆発の原因となった。
2011/05/15 02:02 【共同通信】ーーーーーーーーーー東日本大震災:福島第1原発事故 1号機空だき10時間以上 専門家「公表遅すぎる」
 東京電力福島第1原発1号機で、地震からわずか16時間後の3月12日早朝には、燃料の大部分が溶け落ちていた可能性が強まった。東電の解析によると、燃料の溶融は従来考えられていた以上の速度で進行。外部から冷却水を入れるため、弁を開いて炉内の圧力を下げる「ベント」作業を始めた時には、炉内は既に水位が燃料の下端を下回る「空だき」状態で、燃料の大部分が溶融していたことになる。今後、ベントの作業や外からの注水のタイミングが適切だったかが問われることになりそうだ。【酒造唯、八田浩輔】
 東電のこれまでの発表では、福島第1原発で原子炉が空だき状態になったのは2号機(14日)が最初。1号機は、空だきになっていたことすら公表されていなかった。今回の解析結果が正しければ、1号機の空だき状態は11日午後7時半ごろから、淡水の注入開始(12日午前5時50分ごろ)まで10時間以上続き、ベント開始はさらに5時間近く後になってからだったことになる。
 小出裕章・京都大原子炉実験所助教は「電源喪失で原子炉が冷やせなくなれば、早い時期に炉心溶融に至ることは想定できていたはずだ。燃料の損傷が限定的だとしてきた東電の説明は完全に誤っていたことになる。データの公表も遅すぎる」と指摘する。
 東電は今回の解析で「圧力容器の損傷は大規模ではない」と説明するが、小出助教は「圧力容器は完全に破損し、溶けた燃料が格納容器の底に穴を開け、原子炉建屋の地下に大量の汚染水が漏れ出す原因になっている」と推定する。
 吉川栄和・京都大名誉教授(原子炉安全工学)も「溶融した燃料の一部は格納容器に落ちているだろう」と指摘、東電の解析に否定的な見解を示した。さらに「燃料は格納容器のクラック(損傷部)から水と一緒に漏れている可能性もある」と述べ、地震の揺れや炉心溶融、水素爆発などさまざまな原因で格納容器が損傷している可能性を指摘した。
 工程表への影響について吉川名誉教授は「初めに描いた絵と状況が異なり、収束までの時期は確実に延びるだろう。むき出しの燃料の回収は相当困難な作業になる。廃炉の工程にたどり着くのも難航するだろう」と厳しい見通しを示した。
毎日新聞 2011年5月16日 東京朝刊ーーーーーーー2、3号機も炉心溶融の可能性~細野補佐官< 2011年5月17日 6:50 日テレ・共同通信>  福島第一原子力発電所について、細野首相補佐官は16日、全ての燃料が溶け落ちた1号機だけでなく、2号機と3号機でも燃料が溶け落ちている可能性を示した。
 細野補佐官は16日の会見で、2号機、3号機では約6時間にわたって原子炉に注水できなかったため、メルトダウンが確認された1号機の14時間と比べても決して短い時間ではないとして、「燃料の大半が溶け落ちている可能性を見なければならない」との見解を示した。また、各号機とも溶け落ちた燃料が圧力容器を突き抜け、格納容器に多少は落ちているとの見方を示し、「最悪の場合でも冷却できる仕組みを工程表で示す」と述べた。
 また、会見では福島第一原発の地震直後の原子炉のデータや作業日誌などが初めて公表された。データからは、1号機で津波が来る前に非常用冷却装置が一時停止していたことがわかった。非常用冷却装置が作動しないと燃料の損傷が進むため、「東京電力」は今後、動作状況をくわしく調べるとしている。
 一方、福島第一原発では17日、3号機のタービン建屋などにたまっている高濃度の放射性物質を含む汚染水の水位が上昇していたことから、汚染水約2万2000トンを別の保管場所に移す作業が始まる予定。

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